戻る

◇H20年2月2日:新築分譲マンション値引き裁判
 横浜市中区のマンション購入時に「今後、値下げ販売をしない」と確約したのに、売れ残り分を1年後に1000万円も値下げして資産価値が下がったとして、4戸の住民6人が販売会社「明和地所」(東京)に、計約7700万円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は28日、請求を棄却した。
 
 田中俊行裁判官は「納得し難いことは心情として十分理解できるが、値下げしないとの約束はなく、販売価格をいくらにするかは売り主の自由。値下げ販売してはならない信義則上の義務もない」と指摘した。判決によると、マンションは計66戸で、明和地所は平成14年6月、平均価格約7300万円で分譲を開始。販売不振により、15年9月から平均約6000万円に下げて販売、原告らが購入した。約50戸が売れ残ったため、16年9月から平均約5000万円とし、17年末に完売した。


 判決は、会社側が原告の値引きの求めに応じず、「原価ぎりぎり」などと説明したことは認めたが、「値下げ販売しないとの約束とはいえない」と指摘。「約1000万円の値下げ幅も社会通念上、見過ごせないほど不合理とはいえない」とした。以上、http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/118796より引用

 数年前にも東京都住宅公社が多摩ニュータウンのマンションで、当初の販売価格が5198万円の2LDKが1312万円で再び売りにだされ即完売となったこともありました。この時の値引率はなんと75%です。ここまで値引きできるのは利益度外視の公社だからこそですが、住宅購入を検討されている方にとって値引きはとても気になる話ですね。

 ここでは裁判の審判についてのコメントはいたしませんが、そもそも住宅の値引きって本当にあるのだろうか? ある人は値引いてもらった、別の人はまったく値引いてくれなかったなどと言う話を耳にすることがあると思います。結論から言えばどちらも正解です。では、どのような場合に値引きの有る無しとなるのか、また、値引きの意味について以下述べてみたいと思います。


 基本的に住宅の販売価格は売主が設定します。これは新築の建売やマンションであろうが、中古住宅であろうが同じです。皆さんが気になるのは主に新築マンションや建売の場合だと思いますので、ここでは新築について説明します。

 当初売主が設定する価格はもちろんいい加減につけている訳ではありません。まずは分譲する場所の相場があります。これは主に土地の値段に起因する部分です。同じ東京でも港区と郊外では違いますよね。それから建築費や広告費などの販売費、当然企業ですから利益も上げなければなりません。これらや最新の不動産市況などを検討して売り出す価格を決めます。もちろん企業独自の付加価値もこれにプラスされます。同じ場所にまったく同じ面積と価格と品質の物件があり、売主がそれぞれ潟激bク・ハウジングと○井不動産、○村不動産だったら、どちらを買うでしょうか?いわゆるネームバリューですね。

 ただし、ここまでは売主の予想でしかありません。これがうまく当たっていればその物件は順調に販売が進みます。しかしながら、予想が外れたりすることもままあります。最終的な価格は需要と供給のバランスでマーケットが決めるからです。

 新築の建売やマンションの販売状況はモデルルームや建売現場へ行けば、どの程度売れているのかがわかります。皆さんが買おうと思って現地へ出向いた時、ほとんど申込みや成約となっていれば売主の設定した価格がほぼ正しかったと思われます。こういう場合は、価格の値引きはまず無いと考えて良いでしょう。値引きを言ってくるお客様じゃなくても、他に欲しいというお客様がいるからです。

 一方、新築マンションや建売でもうすぐ建物が竣工するのに、まだかなりの未成約戸数がある場合は売主の設定した価格は読み違えていた可能性が高いです。通常、売主は建物の建築確認を取得した時点から正式な販売を開始します。建物が完成するまで建売で数ヶ月、マンションでは1年超も期間があります。それだけの時間のなかで販売が進まないということは価格の設定に問題があったと思われます。物件の人気・不人気も含めて全ては価格に収斂するからです。

 このような場合は値引きの可能性が大と考えて良いでしょう。なぜならば、マンションであれ建売であれ、建物が完成してしまうと当初想定していない余計な経費がかかります。建物の維持管理費、広告費や人件費、金利などが当初計画した利益をどんどん減少させてしまいます。売ってお客様からお金をいただかない限り、いつまでたっても経費が出て行くからです。

 こうなると売主は値引きしてでも早く売りたくなります。

 さて、でもどうやって値引きするかが問題です。前記の公社のように堂々と値引き販売をすることもありますが、同じマンションや建売現場ですでに購入していただいたお客様がいる場合は、よほどのことがない限りおおっぴらにはやりません。「なんで安く売るんだ」、とクレームとなる可能性が大きいからです。前記裁判もこのたぐいです。

 モデルルームとして利用した住戸であれば、「モデルルーム利用住戸につき特別価格にて分譲」と広告をうつこともありますが、一般的には来場したお客様との個別の価格交渉となります。値引きして売るのは売主にも後ろめたさがあるからです。値引きの仕方は、一律○○万円値引きますという会社もあれば、お客様との交渉のなかで決めていく会社もありやり方はそれぞれです。

 このように考えると「じゃあ、値引きするまで待っていた方が得か?」と思われるかもしれません。しかしながら、先ほども書いたように販売開始から即値引きをすることはまずありません。人気のある物件は値引きをしなくても売れていきます。あとで買おうと思っても、それまでに売れてしまっています。また、売れ残っていた物件を値引くということは、売主が最初につけた価格が間違いで、値引きした価格が正しいということです。その価格が物件のもともとの価値なのです。

 ですから、金額的には安く買ったと思っても、実際のところ得をしたかは分かりません。本当は安い物件を高く買わずにすんだという意味でなら、損をしなかったという方が正解かもしれません。

 普通の人にとって不動産は恐らく一生で一番高い買い物だと思います。限られた予算のなかで誰でも皆、少しでも安くて良いものを買いたいと思うのは当然の心理です。

 でも、不動産に掘り出し物や超お買い得なものはまずありません。お買い得と言われたら、必ずその理由があります。価格は実に正直です。皆さんの契約する価格がそれで正解なのです。その価格について満足するか否かは人によって違います。要は自分自身がその価格を納得して購入することが一番大切なことなのです。

 一生付き合うかもしれない住宅は納得して買わなければ自分も不幸ですし、住宅も可哀想ですものね。